Runner in the High

技術のことをかくこころみ

最近読んだ太平洋戦争に関する本4選

戦争、とくに太平洋戦争に関する本を読んでいる。

大学生のとき語学留学でフィリピンに行ったり、卒業旅行でグアムに行ったりしたが、やはり東南アジアの島国をめぐると様々な形で戦争の形跡を目にする。戦争を経験していない世代として、戦争とはどんなものであったか、というものに興味が湧く。

吉村昭戦艦武蔵

戦史ドキュメンタリーの大御所、吉村昭の綴る定番中の定番。 太平洋戦争を知っている人であれば戦艦大和は誰しも知っているが、その兄弟艦である戦艦武蔵知名度はさほど高いとは言えない。自分も武蔵は名前しか知らなかった。

武蔵の建造までの長い歴史と、いかにしてあの巨艦の進水を成功させたのか、そしてどのようにして最期を迎えたのかが丁寧に描かれている。

日本海軍による最後の実戦投入で、連合軍戦闘機から猛烈な攻撃を受けて撃沈される様は冗談抜きで手に汗握る描写だった。

吉村昭 「零式戦闘機」

最強の戦闘機と呼ばれたゼロ戦の、開発と活躍からその凋落までを描いたドキュメント。

自動空戦フラップや沈頭鋲、アクタン・ゼロの存在をこの本で初めて知った。

戦争はテクノロジーの進歩を促す大きな要因である、というのは例えばインターネットを見ても本当に実感するところではあるけれど、本書の中でも日本海軍がいかに戦闘機開発に心血を注いでいたかがよく分かる。もちろん毎度毎度、新しい戦闘機に求める要求は厳しくなるが、それに応えていた技術者もすごい。

初期のゼロ戦の無双具合を知った上で、後半の連合軍戦闘機によるサッチウィーブ考案以降のゼロ戦のエピソードを見るのは、なかなか心にくるものがある。

源田実 「海軍航空隊始末記」

吉村昭のドキュメンタリはどちらかといえば現場の話がメインになっているが、この本は太平洋戦争中に航空参謀を務めた源田実の目線で描かれた真珠湾攻撃から終戦までのドキュメンタリになっている。後から知ったのだが、この人がブルーインパルスを創設したらしい。

航空参謀だけあって、太平洋戦争に活躍した日本の戦闘機パイロットとのエピソードがたくさん出てくる。

中盤のミッドウェー海戦を超えたあたりから一方的な負け戦が延々と描かれはじめ、しんどい読み物になってくる。特に空母を一気に失ったあたりのやっちまった感は、読者として読んでいるだけでも痛いくらい伝わってくる。

日本人のことを「勝ち戦には人一倍強く、負け戦には案外脆い所がある」と表現しているのが、なぜか心に残っている。

戸部良一、その他 「失敗の本質」

ちょっと前に話題になった本。上の三冊とは若干毛色が違う。ドキュメンタリとは異なる客観的なアプローチで、太平洋戦争における日本軍の組織的特性から「なぜ負けたのか」を考察している。

この本で取り上げられているのは「ミッドウェー海戦」「ガダルカナル作戦」「インパール作戦」など、いわゆる太平洋戦争において激戦とされた戦いの数々で、これを読むだけで太平洋戦争の雰囲気が分かる。

まえがきで「できるだけ多くの人々に読んでもらうために読みやすさ、平易さをも心がけた」と書いているが、正直な所、そこそこ難しいところがある。何が難しいかというと、やはり地名に馴染みがないものが多かったり、そもそも日本軍の組織構造が分かっていないと難しかったりする。それでも、各章にアナリシスとして、その戦いで何が日本軍の敗けへと繋がったのかを要約するものがあるので、それを読むだけでも学びがある。

この本を読んでいると、逆に日本軍と対峙したアメリ海兵隊がいかに戦いの度に組織改善に取り組んでいたかが分かる。著者のひとりである野中郁次郎アメリ海兵隊に関する本を書いており、組織としてどのような点で勝っていたのかを研究している。