Runner in the High

技術のことをかくこころみ

携帯電話開発とYRP

この記事が気になったのでいろいろ調べてみた

togetter.com

端的に言うとSESで常駐になる企業は地域的な危険性がある、という話。そもそもSESという業態自体がどこにいってもヤバいのかもしれないが、それはそれとして具体的な地名がいくつも挙げられ、そしてそれに共感する人が多いところにも謎のおもしろさがある。

我々一般人からするとただ遊びに行くだけの場所であった豊洲やお台場も、こうしてみるとなんとも言えない感覚を覚える場所になる。「海沿いは総じて危険」というのが特に興味深い。確かに豊洲、お台場、勝どきなどのウォーターフロントから、東陽町門前仲町、木場、西葛西などのいわゆる大江戸下町アーバンタウンも多数エントリーしている。しかしこの江東区の多さたるや、不思議なものである。

YRP

出てくる地名の中でひときわ目を引くのがYRPである。一体YRPとはなんなのか。

https://lolipop-teru.ssl-lolipop.jp/gunsou/gunsou-catch01.jpg

その正体は神奈川県横須賀市に存在する施設で、正式名称は横須賀リサーチパークWikipediaによるとNTTやNEC、ドコモ、KDDI富士通など錚々たるメンツの集結する研究開発拠点とのこと*1Google Mapで所在地を軽く眺めてみると分かるが、マジで施設以外にコンビニもなにも存在していない。ひっそりと単身者用の寮が存在しているのも想像力を掻き立てられる。

この横須賀リサーチパーク、YRP軍曹と呼ばれる人間の手記によって別名横須賀リサーチ"プリズン"という名称が広く知られることとなった。その手記は次のリンクから読むことができる。

lolipop-teru.ssl-lolipop.jp

この手記は主にYRPで開発が行われていた携帯電話関連開発にまつわる手記であるが、どうも2004-2008年あたりの携帯開発の現場はかなり激しい環境だったようだ。

www.chococranky.com

確かに、思い出してみればその当時は本当にガラパゴス携帯全盛そのものであった。ソニー、京セラ、NEC、シャープ、富士通、などなど、多くの会社がしのぎを削って突飛な機能を詰め込んだ携帯電話を量産していた記憶がある。技術的なところではBREWやらDojaプロファイル、KCP+などが入り交じり、まさにガラパゴスなモバイル技術黎明期そのものであった。

自分も2006-2007頃といえばSO902iWP+を使っていたのを覚えている。また、2006年頃といえばNTTドコモによるプッシュトークの提供とも時期が重なる。誰があんな機能を使ってたんだ?と今思い返しても謎だが、どうやらその筋の人によると、そのプッシュトークも大くのエンジニアたちの命のもとに生まれたものらしい。

以下は2006年の記事だが、やはりその当時から激化する携帯電話開発競争の異常性は認知されていたようにも思える。

mimizun.com

■急ピッチの開発に現場が悲鳴

 なぜここまで携帯電話のソフト不具合が頻発するのか。最大の理由は、開発体制の構造的な問題にある。携帯電話会社の需要に、ソフトを開発するメーカー側の供給が追いつかないのだ。

 通話以外に、インターネット接続、ゲーム、音楽再生など、様々な機能が詰め込まれた携帯電話機は、開発の6~7割がソフト開発で占められる。進化のスピードも速く、1年間に最低4回は新モデルが登場。数年に1度のペースで新版が登場するパソコンソフトのそれをはるかに凌ぐ。プログラムの分量は6年前に比べて100倍以上に増えたと言われ、構造も複雑性を増している。

 こうした事態を改善するためには、「開発期間を十分に取って、適度な数に携帯電話機の開発数を抑える必要がある」(前出のソフト会社幹部)。

 ところが、そんな状況は見込めそうにない。携帯電話会社各社の競争激化によって、携帯電話機の新機種投入ピッチは以前にも増して上がっているからだ。

 例えばシャープの場合、昨年はドコモに5モデル、ボーダフォンに9モデルを出荷した。実に、毎月1台以上のペースで新機種を投入しているうえ、今後はKDDIへの携帯電話機供給も決まっており、開発機種はさらに増える。

「ケータイの開発はマジで死人が出る」 「携帯の開発現場凄いよ。マジで」 「携帯の開発にはもう二度とかかわりたくない」 などのレスがどこまで本当のことを言っているのかは分からないが、おそらくそれなりの事実があるのではないかと思う。

携帯電話が世の中の一般的なインフラになりはじめ、そしてMRRで継続した利益を得続けられるというビジネスモデルはどう見てもうまみ100%のビジネスモデルだったろう。端末と回線契約の抱き合わせ販売は海外では珍しい。しかし、日本ではこの当時から携帯キャリアの抱き合わせによる独占がはびこり、それが巡り巡って携帯関連開発案件のデスマ化に繋がったのではないかと思う。

いまでこそAndroidiOSという2大モバイルOSによる市場独占によって各社の独自ソフトウェア開発競争は終わりを迎えたようにも見えるが、果たしていまYRPはどうなったのだろうか。誰かこの当時のことを知ってる人がいたら教えてください。

*1:いまもWikiにかかれている企業群が在籍しているかは定かではない