アメリカのDeveloperWeek2020というイベントに参加して登壇発表した。
改めて考えると、社会人になってから初の渡米&初のアメリカでの登壇。
ヨーロッパもいいけど、やはりテックカンファレンスといえばアメリカだよね。
DeveloperWeekとはなんなのか
上の記事でも書いたが、オークランドで開催される規模の大きなエンジニア向けのカンファレンス。 5日間のスピーカーセッション、展示会そして2日間のハッカソンが開催され、文字通り1週間を通してテッキーなイベントが満載、という感じ。
意外にも歴史があり、なんと2013年から継続して開催されている。なので、今年で約8年間開催していることになる。 カンファレンスというのは規模が大きくなればなるほどスポンサーを見つけたり参加者をコンスタントに維持したりするのが難しくなりがちなので、 そんな中で継続して開催されているのは、それだけですごいと思う。
日本からオークランドへ
今回の登壇では前回のelm Europeと同様、イベント開始1日前にオークランドへ到着。
現地にはアメリカ時間で朝10時くらいに到着したが、実は登壇の緊張からか機内で過ごす10時間ものあいだ一睡もできていなかった。 そんなこんなで、到着初日はホテルにチェックインしてそうそう、昼から夕方までガッツリ寝てしまい、あまりいい感じにジェットラグを修正できなかった。
翌日のイベント初日は、特に眠くもなかったせいで朝4時に起きてしまった。 軽く周辺を散歩した後、朝6時半くらいに宿泊しているホテルの食堂でシリアル、ヨーグルト、スクランブルエッグなどの朝飯をガッツリ食べ、会場へ向かうことに。
会場の雰囲気
これは海外のカンファレンスあるあるなのだが、日本と比べて圧倒的に朝が早い。
DeveloperWeekも同じで、会場のレジストレーション・ブースは朝8時からオープンという気合の入りっぷり。意外と朝早くに行ったにも関わらず、ロビーからかなり並んでいてびっくりした。
こんな感じで、参加者が首からかけているバッジで各参加者区分がひとめで分かるようになっている。 スピーカー意外にはスポンサー、ブース出展者、プレミアムパス、スタッフなどの区分があるようだった。
海外のカンファレンスの参加者というのは大半が会社から金を出してもらって参加している。 そのせいなのかは分からないが、参加者の大半が一番高いプレミアムパスを身に着けていた。
スピーカーセッションが行われるステージは会場全体で大小合わせて5-7つほどあり、常にすべての会場でなんらかのセッションが行われている形になっていた。 1セッションあたりが大体25分、長いものだと50分程度になるため、必然的にある時間帯で聞きたいセッションを排他的にひとつ選ばないといけなくなる。 個人的には聞きたいセッションが同じ時間になっていることも多く、これはかなり難儀した。
スピーカーにも比較的大御所の参加者が多く、 有名所では Atlassian, Paypal, Spotify, Amazon あたりの世界的に著名なテック企業から様々なスピーカーが参加しているという感じ。 トークの内容も多様で、MLOpsからマイクロサービス、チーム開発からReactの実装パターンまで多岐にわたる。
自分のトークに関して
自分のセッションではElmに関してちょろっと説明し、実際に弊社でElmを使ったプロダクト開発をやってどんな感じであるかをざっくり話した。
トークの資料そのものは関数型プログラミングカンファレンス2019で使ったものにもう少しJS的なエッセンスを足したものである。 資料自体はすでに英語で作成されたものだったので、リライトには特に困らなかった。 若干関数型プログラミングを知っている前提の内容が多かったため、もう少し純粋なフロントエンドな人たち向けに書き換えたものを用意した。
機材トラブル
今回のカンファレンスは、なんと登壇の際に会場に自分のPCを持ち込むことができないというルールがあった。 そのため、事前にスライドを提出しておき当日は会場に備え付けの(あるいは公式が用意した)ラップトップを使わねばならない。
自分は登壇資料をGoogleスライドで作成していたのだが、当初提出可能なフォーマットにGoogleスライドが含まれていなかったため、事前に運営へ「Googleスライドは使うことができるのか」と問い合わせていた。 数日して返ってきた運営の回答は「問題ないが、GoogleスライドのURLを貼り付けたPPTファイルを提出してくれ。」とのことだった。 なるほど、そんなURLが貼り付けられただけの資料をどのように使うのかは分からないが、とりあえずOKということで雑に提出することにした。
正直、この時点で少し当日なにか起きるかもしれないという可能性を10%ほど感じていた。 というのも、自分はトークの内容をすべてスピーカーノートに英語で全部書いておき、発表中はそれを読むだけでいいようにしているからだ。 そんなわけで、会場の機器がどういう設定になっているか分からないが、もしスピーカーノートが見れないと大変なことになってしまう。
しかし、今回は実際にその10%の確率で予想していたことが起きてしまった。
(自分のセッションが始まり、ステージ上で準備中)
ぼく 「あれ、スピーカーノートが見れないんですけど」
スタッフ 「え、まじで?」
SafariでGoogleスライドのスピーカーノートを開いた状態で全画面化すると、なぜかメインのモニタが真っ黒になってしまう。 なんてこった、これではトークの内容がわからないので話せない。
スタッフにヘルプを要求すると、スタッフもただならぬ事態に動揺を隠せない様子。 しばらくするとワラワラと他のスタッフも駆けつけてくる。 みんな映像機器とガチャガチャといじってくれるものの、おそらく誰もまともに会場設備のセッティングを理解していないことが伝わってくる。
ぼく 「こうなったら、スマホを見ながら話します。これでも見れるんで。」
スタッフ 「それは... やりやすい?(Is it comfortable for you?)」
ぼく 「いや、ぜんぜん... けどもうそれしかないですよね」
スタッフ 「...じゃあそうしよう」
20分尺のところ、さすがにセットアップで5-6分も過ぎはじめていて危険な空気が漂い始めていた。 こんなときのためのコンティンジェンシープランとして用意していたスマホでスピーカーノートを見るという手段を、まさか本当にやることになるとは思わなかった。
さすがに準備の間の緊張がピークだったこともあり、良くも悪くも話している間はすごく平穏な気持ちでトークができた。 この経験から、次からは絶対にスピーカーノートを頼らずに、トークの内容を暗記していくことを心に誓ったのであった。
もう二度とこんな悪夢みたいな体験はしたくない。
DeveloperWeekについて改めて感じたこと
参加してから数日経って、どうやらDeveloperWeekというイベントは存在そのものが見本市的なノリのカンファレンスなんだということが分かってきた。
みんなのトーク内容の殆どが自分たちの製品を売り込むためのセールストーク的な内容で、事実スピーカーの大半はCTOやらセールス・エンジニアというポジションである。 自分のPRO SESSIONというやつも、おそらく製品の売り込み的な意味でPROだったのかなと分かってきた。
とはいえ、資料作成時のポリシーには「スポンサー枠のスピーカーじゃない場合には自社製品のアピールとかしちゃダメよ」みたいなことも書いてあったので、自分みたいに純粋に会社とか製品関係なくトークをしていた人もいたのかもしれないが、あまり目にはつかなかった。
2015年に自分が参加したときはハッカソンしか見ていなかったのでよくわからなかったが、スピーカーセッションのほうはこんな感じでコマーシャル的な要素がとても強い。 まあ、イベント自体やトークの内容自体、おもしろくはあったが、それでも去年参加したelm Europeのようなコミュニティ感というのはマジでゼロだった。
感想
まさか、アメリカで人生最大のピンチとも言えるタイミングを迎えることになるとは思わなかったが、これはこれである意味ものすごいスリルだったので、終わってみるとジェットコースター的な興奮があってウケた。
アメリカで登壇失敗しても日本に返ってくればチャラみたいなものなので、失敗なんてなにも怖くないというのがリアルな感想である。とはいえ、もしこれがYoutubeとかに残ってしまうと思うと... 最悪で仕方がない。
カンファレンス自体は、規模はデカいわ、いろんなトークが聞けるわ、いろんな人と英語で話せるわで楽しかったが、むしろ改めてElmのコミュニティって暖かいんだな〜と思わされた。 やっぱコミュニティと繋がりの強さって大事ね。