マネージャという役職として働くようになってそろそろ2年目が見えてきた。
自分の所属するUniposでは、複数チームが開発組織に並存するようになってから日が浅く(とは言っても1年以上は経っているが)それにともなって各チームをマネジメントするミドルマネージャ(中間管理職)というポジションはまだ黎明期的な立ち位置にある。転職組はある程度経験者もいるとはいえ基本的にはみんながニューゲーム状態であり、自分も全くと言っていいほど手探りな進み方をしている。
そんな中でも、ある程度「ミドルマネージャかくあるべし」を知るのに役立った書籍を3つ紹介する。
HIGH OUTPUT MANAGEMENT
マネージャという立ち位置ならこれを読まない人はいないレベルのやつ。
なにから読むべきか... というときにはまずこれで間違いない。とはいえ、文章もなかなか小難しい感じでもありかつボリューミイなのである程度腰を据えて読む必要はある。
この本を読むまで自分の中でマネージャとしての仕事の使い方は正直微妙で、マネージャであるのに自分もプロジェクトの中で開発メンバーとしてがっつりコードを書いていた。もちろんマネージャがコードを書くのは悪いことではないが、そのときの自分の仕事の比率といえばマネージャ業務と実装業務でほぼ2:8くらいの割合だった。思い返せば、その頃の自分はひとりのエンジニアとして出してきたバリューをマネージャになって失うのが怖いという理由で、マネジメント業務を満足にやらずにコーディングに逃げていた*1ような気がする。
マネージャというポジションにいるにも関わらず、やっていることはマネージャではないメンバと同じというバリューゼロの最悪なパターンを体現してしまった反省として「マネージャというポジションの出すべき価値はなにか」を探し回った結果この本にたどり着いた。有名な本なので言うまでもないが、自分もこの本を読んでマネージャというポジションへの捉え方が大きく変わり、自分の時間の使い方に自信が持てた。
ちなみにこれを読むのがかったるいという人は、田端信太郎が田端大学で出しているYoutubeのこの動画を見るだけでもとっかかりは知れるのでおすすめ。これを見てもっと知りたくなったら本を読むといいかもしれない。
EMPOWERED
会社で行われているマネージャ陣の輪読会で読んだ本。
マネージャとしてのリーダーシップにはプロジェクトマネジメントや育成はもちろん包含されるが、それと同時にマネージャ自身が「最もプロダクトをマネジメントできている存在」であることが求められる。EMPOWEREDはそのような内容にフォーカスを当てたプロダクトマネジメントの本になっている。
組織によってはあえて"プロジェクト"マネージャという呼称をしないところもある。これはマネージャの責務というのは人やプロジェクトのマネジメントだけではなくプロダクトの行く方向もマネジメントするべきだ、ということを示している。クライアントワークや受託開発ではなく自社開発のSaaSプロダクトなどを抱えた企業においては、プロダクトマネジメントという考え方は要求されて当然*2なものだ。
この本の中でプロダクトマネジメントに包含される形で現れる「プロダクトディスカバリ」の考え方はマネージャの時間の使い方の観点で重要な要素になりえる。マネージャはチームにとってあらゆる手段を講じて仕事を作る責任を与えられているはずだし、その仕事はデリバリや開発プロセスの改善的だけではなくプロダクトそのものの在り方を変えるものにもなり得る。組織や個人の嗜好にもよるとは思うが、マネージャとしての仕事の幅を広げることはプロダクトにとっても自分のキャリアにとっても(ゆくゆくはチームにとっても)重要だと思う。
最後に、個人的に印象に残っているのは書籍中のコーチングセクションにある「ナラティブ」と呼ばれるトピックの章。2-3ページ程度しかない中身はないが、自分にとってのリーダーシップとはこのナラティブに集約されるのではないかとすら感じる。マネジメントが人間同士のコミュニケーションである限り、どのような場においてもナラティブせずに仕事は前に進められない。この辺のスキルを根本から考えるには、おそらくアリストテレスの弁論術や、デール・カーネギーの「人を動かす」などにつながってくるような気がする。あとは同じくデール・カーネギーの「話し方入門」もいいかもしれない。
アート・オブ・プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントはマネージャにとって呼吸をするレベルで出来て当然のスキルだと思うが、それにも関わらずプロジェクトのマネジメントの前提知識はどこにも転がっていない。それでもなんとなくある程度やってみると、プロジェクトマネジメントというのは「スコープ」「人」「スケジュール」の三竦みというところまでは分かってくる。この辺は大抵の場合、ある程度は体得的なものだと思う。
そういった体得的なものをある程度体系づけて事前に知っておくのにこの本はぴったりだと思う。プロジェクトマネジメントに必要な「マインド」「準備」「戦略」「戦術」がたくさん詰まっている。特に「中盤の戦略」「終盤の戦略」の章は具体性の高い話が多いので、ある程度のプロジェクト(~1,2か月規模)をマネジメントする際にはやっておけば間違いない事柄を一気に体系立てて学べる。
とはいえ、この本の前半部分を読めば察してしまうのがやはりマネジメントとは気合そのものだという事実だと思う。マネージ(manage)の日本語訳が「どうにかする、うまくする」になっていることからも分かるように、結局は「どうにかする気合」がマネジメントの本筋(特にプロジェクトが大きければ大きいほど...)なんだろうなという感想になってしまうのは、マネージャとしてツラいところでもあり、ワクワクするところでもある。