今年の頭くらいに書いた今年の抱負に関する記事の中で「不動産投資に関する本を読む」とあるが、ちゃんと有言実行ということでとりあえずいろんな本を読んでみたので、その感想を記事にしておく。
胡散臭い投資代表「不動産」
我々パンピーからすれば、不動産といえば胡散臭い投資ナンバーワンであると言ってもよい。
周りに「不動産投資やってますか?」と聞いてもやっている人が自分の周りにはほとんどいない。一方で「知り合いに不動産投資をしている奴がいて、全然儲からないらしい」とか「前職の知り合いで不動産投資で大失敗こいた人がいる」みたいな情報は多い。つまり失敗している人の情報はいくらか流れてくる。
不動産とインターネットの相性は最悪
不動産に限らず単価の高い情報というのはインターネットがゴミの山になりやすい、かつ情報が雑多でまとまりがないものになりがちだと思う。とくに不動産は特にその傾向が強い。やはり無料で情報を手に入れようとする人間は、無料以上の情報を手に入れることができない。不動産セミナーも絶対に無料のセミナーには参加するな、とよく言われる。不動産という商品の単価を考えると、金を払わずに情報を得ようとする人間が、どれだけの代償を払わねばいけなくなるということがよく分かる。
また、やはり不動産は単価の高い商品だけあって、不動産に関連するアフィリエイトの単価も必然的に高い。それだけに、インターネットの輩によって積極的に不動産関連の相談会に誘導したいだけのしょうもない記事や、特定の不動産仲介業者との媒介契約を結ばせたいだけのマンセーな記事で溢れる。つまりインターネットで不動産のことを調べてもなにも参考にならない。リアルな声はアフィリエイトに埋もれるし、だいたい調べても「危ないからやめたほうがいい」という言葉しかでてこない。
不動産投資の本を読むことでまとまった情報を得る
とはいえ、本も本で注意が必要なのは間違いない。そもそも筆者が自分の投資スキームを広めたかったり、自分の投資スキームと真逆の方針を喧伝することでライバルを減らそうと目論んでいたりするからだ。
この点を意識するに、絶対に一冊の本を盲信してはいけない。不動産投資の本は異なる筆者のものを読めば読むだけ良い。全ての筆者に共通する指標や意見があれば、ある人はAと言っておきながら別の人はBと言っていたりする。そういうものをすべて一旦自分の中で咀嚼した上で、改めて自分の中での答えをだすのがよい。
まずは、アパート一棟買いなさい!
[新版]まずはアパート一棟、買いなさい! 資金300万円から家賃年収1000万円を生み出す極意
- 作者:石原 博光
- 発売日: 2016/02/27
- メディア: 単行本
- 所有者の判断で管理費用を調整できない
- 賃貸収益から維持費用などを差っ引くとまったく利益がでないケースが多い(これは要計算)
- マンションそのものを持っているのに比べて資産価値が低い
- 入居者がいないだけで利益がゼロになる
などなど。区分所有は初期投資が比較的少なくても始めやすい不動産投資のひとつであるが、簡単に始めやすいぶん利益率を考えると複数持たなければリスクヘッジできない投資である。不動産をひとつ購入するのに、書類を書いたり物件を探したりなどの少なくない労力がかかることを考えると、区分所有を最初の不動産投資として勧められないのは納得がいく。
以上を踏まえた上で著者は初めての不動産こそ一棟アパートを買うように勧めてくる。まず前提として区分所有と比べて一棟買いは管理費用の調整が自由であること、資産価値が大きくなる(したがってローンも組みやすい)こと、複数戸物件であれば空室リスクを部分的にできること、の点で区分所有より優れている。一棟でもマンションでなくアパートである理由は、マンションになると大規模なものが多いため、今度は初期投資込みでローンを組むのが難しく、またエレベータなどの維持費用のボトルネックになるものが増える傾向にあるからだ。
自分も最初はインターネットの知識に踊らされて区分所有がいいかな〜と考えていた所があるが、安く買えるからと言ってそれが最初の不動産として優れているかはまた別問題であるということに気がついた。他にも、この本ではリフォーム戦略や築年数の経過に関してのアドバイスが難しい言葉抜きで書かれており、最初の一冊としては悪くないかと思う。一方で、後述の「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組み合わせ戦略」と比べると、ややリスクやお金に関する知識の網羅性が弱い。イールドギャップくらいはちゃんと説明されているが。
初めての不動産投資成功の法則
- 作者:藤原 正明
- 発売日: 2018/03/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
Kindleで買った2冊目の本。筆者は違う人だがこちらの本もやはり「アパート一棟買い」を勧めており、本の内容は全て一棟買いがなぜ良いかを説明するものになっている。一つ前の本が筆者の成功事例をベースにかかれているのに対して、この本では(本当の事例かは分からないが)不動産投資で失敗した人の事例も取り上げられている。失敗事例には次のものがある。
- 知り合いがやっているからという理由で新築区分ワンルームを購入
- 高収益物件という広告を見て中古区分マンションを購入
- 表面利回りだけを見て新築アパートを購入
まあ、たしかに失敗するだろうなという事例ばかりが取り上げられているが、結局自分で不動産投資についての情報を集めることなしにホイホイ高い金を払って物件を購入することがいかに危険かがよく分かる。
加えて、特にこの本で参考になったのは「不動産投資をすることで自分自身がどうなりたいのか、をイメージすることが大事である」という話だった。不動産投資をするということは、そのベースに「お金を稼ぎたい」という欲求があることは大抵のケースで間違いないが、翻って「なぜ不動産投資でお金を稼ぐのか」「最終的に月/年ベースでいくらの収益を目指すのか」を予め考えておかなければ、場当たり的な意思決定に陥り大きな失敗に繋がる可能性がある。
とりあえず不動産オーナーになりたい、という理由だけででっかくローンを組んで都内に新築マンションを買ったりなどは、自分の中で筋の通った意思決定のビジョンがあればよいが、ともすれば行きあたりばったりの決断で大きな負債を抱えるハメにもなる。
この本も比較的読みやすい文章でよかった。加えて、相続税対策や法人設立スキームなど、より本格的なビジネスとして不動産投資を考える方向で話が進む。また、決定的な違いとしてこの本では「出口戦略」にも言及する。不動産を保有する以上、最終的にその不動産をどうするのか(築100年になっても保有するのか、それとも40年までには売却するのか、など)を事前に考えておく必要がある。自分が住む家と違い、資産として保有するからには、ちゃんとその物件が稼働してお金を生む状態になっていなければならない。つまり、残っているローンと物件の状態を照らしあわせた上で、物件売却の値段と売却までに出せる利益率が最も高くなる時点を狙って物件を手放す。この計画が出口戦略である。
もうちょい実践的な本
正直な話、上で言及した本ふたつは損益計算においてイールドギャップやデッドクロスの計算など簡易的なものしかカバーしておらず、もう少し具体的な損益計算をする術を知っておきたいという場合には物足りないケースが多い。そもそも不動産投資などの大きなお金が動くものに関してなあなあに計算して意思決定してよいはずがない。
人間誰しも購入する対象の額がでかくなってくると、すぐ思考がバカになってくる。2000万円の買い物をするのに50万増えたところで誤差に見えてくる。これは場合によっては誤差の範囲になるし、場合によっては後を引く問題になる。
誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組み合わせ戦略
- 作者:猪俣淳
- 発売日: 2010/09/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
数値計算以外にも「入居者の5分類」「地方の都市化が不動産に及ぼす影響」から「震災時に物件が損壊した際の損益計算」や「景気が人口に与える影響」などなど、徹底的にリスクとなりうる自体をこれまでのデータと照らしあわせて数値化することの重要性を教えてくれる。そもそも、不動産が他の投資に比べて優れているのは、事前にありとあらゆる計算をして適切な情報を手に入れておくことでリスクヘッジができるという点である。たとえばFXや株価は相対となる市場の数値を自分ではコントロールできないし、むろん競馬や競艇、宝くじなどはもってのほかである。とはいえ、リスクヘッジをするための計算や情報集めには適切な知識と情報源が必要である。この本を通してそのようなリスクヘッジの術を学ぶことができる。
不動産の「収益計算」本格入門
誕生日に買ってもらった本。「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組み合わせ戦略」は不動産の利益率など価値の最大化のための数字の考え方をたくさん知識として提供してくれる本だったが、こちらは税の観点でどう不動産という資産を計算するのかをひたすら説明する本になっている。不動産は比較的ポピュラーな投資である株などとは異なり、収益計算を自前でやらねばならない。株なら証券会社がすべてやってくれるが、不動産はアウトソーシングしない限りは自分でお金の計算をすることになる。この本の第一章で主張されていることではあるが、もはや不動産投資は単なる投資ではなく「事業」そのものであると言える。結局、これが会社になれば経理の人間たちがやってくれるようなことを、不動産投資を行う人間は自前でやるわけである。こう考えると購入対象の物件の選定から、融資交渉、そして物件の管理(これはさすがに管理会社に任せるだろうが)そしてこうした税金周りの経理業務までひとりの人間がやるのは、片手間で収まるようなものではないような気もしてくる。
所感
おそらくだが、不動産で利益を出そうとおもったら本気で不動産のことを考える時間にコミットできないと大変なことになる。世の中にいる「不動産投資で大損こいた」と言う人間は、確実に自分自身で未来のリスクを全て洗い出して計算するようなリスクヘッジをやらずに、他人任せにして失敗していると思う。不動産は片手間でやるようなものではないし、プログラミングが好きな人間が土日も好きでコードを書くように、土日も好きで自分の不動産のことを考えられるような人間が不動産投資をするべきだ。
それから、不動産投資は情報を持っている人間が絶対的に特をする分野であることは間違いない。たとえば、いつどこで新しくスーパーマーケットが作られるか、新駅がどこにできるか、新しく都市開発計画が持ち上がっているのはどこか、など間接的にも直接的にも人や土地の動きに関連するような情報である。会社の先輩の奥さんが某大手商社に勤めているとのことだが、やはり不動産をやっている人間は身近には多くいると聞く。一方僕の周りで直接不動産投資をやっている人間は一人もいない。